文書作成日:2016/09/30


 今回は、台風接近時の出勤の取扱いについての相談です。




 大型台風がこの地域を直撃する予報が出ています。すべての職員に出勤を命じてよいものか思案に暮れていますが、どのように取扱うべきでしょうか?




 安全配慮義務の観点から、すべての職員に出勤を強制すべきではありませんが、事業の正常な運営を図る必要もありますので、最低限の人員で対応できる体制を構築すると同時に、タクシー利用を容認するなど、通勤方法に柔軟性を持たせることも検討すべきでしょう。




 大型台風となれば、職員によっては出勤ができないといった問題が生じ、事業の正常な運営に支障が出る可能性があります。もちろん、そうした大型台風が接近する際には、その日に診療するのかといった問題もありますが、医療機関としての使命を果たすためにも、診療するケースは少なくありません。

 しかしながら通勤時に強風によって看板等が飛んできたり、川が氾濫したりといった災害も予想され、そうした場合に職員に出勤を強制することが本当によいのかといったことは、改めて考えなければなりません。天災地変による職員の被害という点では、労働裁判例である七十七銀行事件(仙台地裁・平成26年2月25日判決)が参考になります。この事件では、東日本大震災において女川支店の屋上に避難をした行員が津波に流されて死亡したことについて、裁判所は「その生命等が地震や津波といった自然災害の危険からも保護されるよう配慮すべき義務を負っていた」と明示し、天災地変発生時における企業の従業員に対する安全配慮義務が適用されることが明確化されました。労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められており、大型台風においても配慮すべきものと理解しなければなりません。

 したがって、最低限の人員で診療ができるように、職員の居住地を確認し、比較的安全に出勤できる職員を確保すると同時に、止むを得ない場合には、無理に出勤させることなく自宅待機してもらうといった対応を考える必要があります。この場合、天災地変の不可抗力による休業と判断されるときは、自宅待機をしてもらう職員に、労働基準法第26条に定める平均賃金の6割以上を支払うという休業手当の支払いは原則不要ですが、頻繁に発生するものでもないため、通常時と同様の賃金を支払うよう配慮してあげたいものです。また、出退勤にあたって、公共交通機関が止まるといったケースも想定されることから、タクシー利用による通勤を認めるといった柔軟性も併せて持っておくと、職員の安心感も高まるでしょう。


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