今回は、所定労働時間変更後に年次有給休暇を取得した場合の賃金に関するご相談です。
当院には、1日の所定労働時間が5時間という労働条件で契約しているパート職員がいます。
本人の希望もあり、所定労働時間を7時間へ延長する予定です。
このように労働条件を変更した後で、年次有給休暇(以下、年休)を取得した場合、どのように賃金を支払ったらよいでしょうか?
年休を取得した日の賃金は、年休の取得日の労働条件に応じて支払う必要があります。
よって、所定労働時間を長くした後で、年休を取得した際には、変更後の7時間分の賃金を支払うことが求められます。
なお、年休の付与日数は、付与日時点の所定労働日数に基づき決定されますので、労働条件を変更したとしても、当年度においては付与日数等を変更する必要はありません。
年休を取得した日の賃金は@平均賃金、A所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、B標準報酬日額のいずれかの方法で支払うと定められています(労基法第39条第9項)。
一般的に、Aの方法(通常支払賃金方式)が多く採用されており、月給制の場合は賃金の減額をせず、時給制の場合は時給額に年休を取得した日の所定労働時間を乗じて計算した賃金を支払います。
そのため、日によって所定労働時間が異なる場合には、年休を取得した各日の所定労働時間に応じた賃金を支払うこととなります。
これを避けたい場合には、@の平均賃金方式を検討することになるでしょう。
年休の付与日数は、付与日時点の労働条件によって決まります。
年休を付与した後に、所定労働時間や所定労働日数を変更した場合でも、付与する日数は次の付与日まで変わりません。
週の所定労働時間が少ないパート職員などに付与される日数は、比例付与として所定労働日数に応じて正職員より少なくなることがあります(下表参照)。
パート職員の所定労働時間を変更する場合、年休を取得した日の賃金や次の付与日に付与する年休の日数が変わることがあります。特に注意して管理しましょう。
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