文書作成日:2022/07/15


 個人の事業を承継するに当たり、事業用資産に係る贈与税・相続税の納税を猶予又は免除してもらえる制度があります。


 法人の株式を贈与又は相続等をした際に生じる贈与税・相続税の納税を猶予又は免除してもらえる「法人版事業承継税制」に対し、個人の事業用資産の贈与又は相続等に係る贈与税・相続税の納税を猶予又は免除してもらえる「個人版事業承継税制」があります。

 いずれも制度名に“事業承継”と入っていることからお分かりのとおり、事業承継に伴う税負担を軽減することで、事業承継を早期に円滑に行えるよう国が後押しする制度となっています。

 これらは、いずれも都道府県知事の認定を受ける必要があることや、時限措置であることが特徴です。

法人版(特例措置)個人版
事前の計画策定5年以内の特例承継計画の提出
[2018年4月1日〜2024年3月31日]
5年以内の個人事業承継計画の提出
[2019年4月1日〜2024年3月31日]
適用期限10年以内の贈与・相続等
[2018年1月1日〜2027年12月31日]
10年以内の贈与・相続等
[2019年1月1日〜2028年12月31日]
対象資産非上場株式等特定事業用資産
納税猶予割合 100%100%
承継パターン複数の株主から最大3人の後継者原則、先代一人から後継者一人
※一定の場合、同一生計親族等からも可
贈与要件一定数以上(※)の株式等を贈与すること
※後継者一人の場合、原則2/3以上など
その事業に係る特定事業用資産のすべてを贈与すること
雇用確保要件あり(特例措置は弾力化) 雇用要件なし
経営環境変化に対応した減免等ありあり
※後継者が重度障害等の場合は免除
円滑化法認定の有効期限最初の申告期限の翌日から5年間最初の認定の翌日から2年間
出典:中小企業庁「経営承継円滑化法-【個人版事業承継税制の前提となる経営承継円滑化法の認定申請マニュアル】令和4年4月改訂版」


 個人版事業承継税制の適用対象となる「特定事業用資産」とは、先代事業者の事業(不動産貸付業、駐車場業及び自転車駐車場業を除く)の用に供されていた次に掲げる資産で、先代事業者の贈与又は相続開始の年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されているもの(先代事業者と生計を一にする親族が所有し、かつ、先代事業者が事業の用に供していたものを含む)のうち、事業の用に供されていた部分をいいます。

  1. 宅地等
    事業の用に供されていた土地又は土地の上に存する権利で、建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち、棚卸資産に該当しないもの。(納税猶予の対象となる面積は400uまで。「特定事業用宅地等」として小規模宅地等の特例を受ける場合には適用不可)
  2. 建物
    事業の用に供されていた建物で棚卸資産に該当しないもの。(納税猶予の対象となる面積は800uまで)
  3. 減価償却資産
    1. 固定資産税が課税される償却資産(構築物、機械装置、器具備品、船舶等)
    2. 自動車税又は軽自動車税において、営業用の標準税率が適用される自動車等
    3. その他上記に準ずるもの(貨物運送用の一定の自動車、取得価額500万円以下の乗用自動車、牛等の生物、特許権等の無形減価償却資産)

 上記にある資産が対象となることから、例えば次のような資産は「特定事業用資産」に該当しません。

  1. 不動産貸付用の宅地・建物
  2. 棚卸資産
  3. 事業用の預貯金
  4. 売掛金


 個人版事業承継税制を適用するに当たり、主な留意点は以下のとおりです。

  1. 事前の計画策定や認定期限、適用期限に制限があること
  2. 納税猶予される税額及び利子税の合計に見合う担保を提供すること
  3. 申告後にも猶予期間中は3年に1回「継続届出書」を税務署へ提出すること(提出を怠ると納税が猶予されず、税額の全部と利子税をあわせて納める必要が生じます)
  4. 事業廃止など一定の事由に該当した場合には、納税が猶予されている税額の全部又は一部について利子税とあわせて納付する必要があること

 対象となる資産が限定されていることからもお分かりのとおり、特に減価償却資産としての計上額が高額となる設備投資の大きな診療科が適用に適しているものと思われます。
 なお、個人版事業承継税制には様々な要件等がある他、上記以外にも注意すべき事項はあります。事業承継に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

参考:中小企業庁HP「個人版事業承継税制の前提となる認定」など


※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。